更年期女性に対しての美容外科治療(主に注入剤について)

更年期女性に対しての美容外科治療(主に注入剤について)

しわや陥凹に対する注入剤治療として、コラーゲン製剤、ヒアルロン酸製剤、ボツリヌス毒素製剤、ポリ乳酸製剤を取り上げ、使用適応や注入方法を報告。

使用される注入剤の特性

コラーゲン

コラーゲンは皮膚に多く含まれるたんぱく質で、しわや陥凹部に注入して充填材として用いる、という位置づけ。製剤はウシ由来とヒト由来に分かれ、ウシ由来は事前の皮内テストが前提になります。注入手技としては、真皮の浅い層へ少量ずつ入れていき、左手で患部を押さえつつ注入器を置いて針先を安定させる。深く入れすぎず、製剤がわずかに外へ漏れる程度の浅さで、注入部位が短時間白くなるように圧をかける。

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸も、しわや陥凹部へ注入して用いる材料として扱われます。たんぱく質ではないため皮内テストは不要とされる一方、まれに発赤や腫脹が出ることがある。隆起力が大きい性質から深い陥凹で使いやすい反面、浅いしわには向きにくい。また、薄い皮膚に入れると凹凸が目立つことがあるため、その点を事前に伝える必要がある。治療結果としては、コラーゲンと比べて凹凸や触れたときの硬さがやや出やすいので、皮膚が厚い部位が勧められる。

ボツリヌス毒素

ボツリヌス毒素は、筋肉と神経の接合部に作用して筋収縮を抑えることで、表情筋によって生じるしわに働く。目尻・額・眉間などのしわの出現を抑える効果がある。単独でも使えるものの、目尻や眉間ではコラーゲンとの併用により、さらに良い結果に結びつくことがある。効果は約3か月とされ、治療間隔が短い。加えて、過剰投与や手技の誤りで対象外の筋に作用すると、眼瞼下垂や眉毛下垂などの不都合が起こり得る。

ポリ乳酸

ポリ乳酸は乳酸の重合体で、微粒子を液体に混ぜた状態で用い、陥凹部へ注入して隆起させる材料。しわには向きにくく、早く変化を求める場面でも使いにくい。効果の出方が遅いため、約3か月は経過を見ないと過剰投与になり得る。

適応

適応としては、ポリ乳酸以外は主にしわ・陥凹を対象としつつ、傷跡の陥凹や手術跡の陥凹も対象になり得る。老化に伴うしわや表情でできるしわが適応として優れるとし、額や眉間のしわ、目尻のしわ、鼻唇溝が深く目立つ場合などでは改善が分かりやすい。ポリ乳酸は頬の陥凹や顎を隆起させたい場合などで有効です。

注入に際しての注意点

注入に際しての注意点では、ウシ由来コラーゲンを使う場合、問診と皮内テストが事前に必要で、局所麻酔薬(キシロカイン)やコラーゲン製剤に免疫反応陽性を示す場合はコラーゲン注入を行えない。皮内テストは治療の4週間以上前に前腕部などへテスト注入し、4週間の観察期間中に発赤や腫脹が出れば陽性と判断する。ヒト由来コラーゲンではこの陽性反応が出ないため、安心して使用できる。

合併症

合併症としては疼痛、皮下出血、ビーズ反応が挙げられます。疼痛は刺入時が中心で治療後は残りにくく、皮下出血は1〜数日で改善する扱いです。ビーズ反応は注入剤の濃度が高い場合に白い凹凸が出る現象です。副作用として特に注意すべきものに皮膚壊死、膿瘍形成、遅延型陽性反応があり、壊死は眉間やフェイスリフト後の頬に架橋コラーゲンを注入した場面で起こり得るため、初回から架橋コラーゲンを選ばない。遅延型反応は皮内テストが陰性でも注入後数か月以内に発赤腫脹が出ることがあり、観察の徹底や皮内テストを2回以上行う。頻度の目安は10,000例中10〜20例程度で、処置を誤らなければ後遺症はほとんど見られない一方、ステロイド外用を長期に続けた場合には別の後遺症が起こり得る。

目尻と下眼瞼の皺

目尻と下眼瞼の皺/治療前/目尻には ZydermIを下眼瞼には Atelocollagen1%を注入

治療2週後/目尻と下眼瞼の皺は浅くなった

本稿は、征矢野進による「更年期女性に対しての美容外科治療(主に注入剤について)」『更年期と加齢のヘルスケア』Vol. 4, No. 1, pp. 74—79, 2005の内容を元に構成しています 。

1952年(昭和27年)12月29日、長野県木曽福島町に生まれる。1967年(昭和42年)4月に長野県上田高等学校へ入学、高校在学中の1970年(昭和45年)8月から1971年(昭和46年)7月までアメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルトン・アカデミー高校へ留学、同年7月に卒業した。1972年(昭和47年)3月に上田高等学校を卒業後、同年4月に東京大学理科三類へ進学。東京大学では医学を専攻し、1979年(昭和54年)3月に東京大学医学部医学科を卒業。

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