

注入療法は、加齢などにより生じる皮膚のしわや凹みを対象に、不足した組織成分を補うことで外観の改善を目指す治療として発展してきました。現在広く用いられている注入材にはコラーゲンとヒアルロン酸があり、素材ごとに特徴や適した部位が異なります。
コラーゲンは皮膚構造を構成する主要成分のひとつで、額や眉間、鼻唇溝など比較的深さのあるしわや陥凹への使用が行われてきました。ウシ由来製剤では免疫反応の可能性が指摘されており、治療前に皮内テストを実施し、一定期間経過を確認する手順が取られています。一方、ヒト由来のコラーゲンでは同様の反応はほとんど認められず、使用時の制約が少ない点が特徴とされています。注入後の効果は恒久的ではなく、体内で徐々に分解されるため、持続期間はおおむね6か月から1年程度と報告されています。
ヒアルロン酸はもともと皮膚や関節などに存在する物質であり、タンパク質ではないことから、通常は事前の皮内テストを必要としません。ただし、製造工程に由来する微量成分の影響と考えられる反応として、まれに注入部位の発赤や腫脹が生じる例があります。また、皮膚が薄い部位では、注入後に不整や硬さが目立つ場合があるため、使用部位の選択には注意が必要とされています。
これらの注入材はいずれも、しわや陥凹の改善において一定の治療効果が確認されていますが、素材ごとの性質を理解したうえで、部位や皮膚状態に応じた使い分けを行い、事前に十分な説明を行うことが、安定した結果につながると考えられています。

鼻唇溝の治療前

鼻唇溝の治療2週間後
本稿は、征矢野進一による「注入療法について(コラーゲン、ヒアルロン酸など)」および関連する臨床報告をもとに、内容を整理・再構成したものである。
2005年 日本皮膚科学会雑誌 第115巻 別冊
1952年(昭和27年)12月29日、長野県木曽福島町に生まれる。1967年(昭和42年)4月に長野県上田高等学校へ入学、高校在学中の1970年(昭和45年)8月から1971年(昭和46年)7月までアメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルトン・アカデミー高校へ留学、同年7月に卒業した。1972年(昭和47年)3月に上田高等学校を卒業後、同年4月に東京大学理科三類へ進学。東京大学では医学を専攻し、1979年(昭和54年)3月に東京大学医学部医学科を卒業。