スレッドリフト(吸収糸)の治療経験

スレッドリフト(吸収糸)の治療経験

吸収性素材で作られたトゲ付き糸を用いるスレッドリフトは、切開を行わずに顔面のたるみ改善を目指す低侵襲な治療法として報告されている。使用される糸は体内で徐々に分解・吸収される素材から成り、糸表面のトゲ構造が皮下組織に引っ掛かることで、物理的なリフティング効果を生じさせる仕組みである。
施術は局所麻酔下で行われ、耳介付近から頬、口唇、顎方向に向けて皮下へ針を通し、糸を留置する方法が用いられている。術後は大きな固定や包帯を必要とせず、数日から数週間の経過で外観は落ち着き、糸による膨らみや違和感も時間の経過とともに軽減するとされている。

臨床報告では、主に鼻唇溝や口角周囲のしわ、頬部のたるみを対象に治療が行われ、従来のフェイスリフト手術と比べて施術時間が短く、日常生活への復帰が早い点が特徴として挙げられている。とくに長期のダウンタイムを確保しにくい症例において、有用な選択肢となり得る治療と位置づけられている。
一部の症例では、糸端の触知や突出などの反応がみられたものの、多くは簡単な処置で対応可能であり、重篤な合併症は少なかったとされている。吸収性糸を使用することで、非吸収性素材で問題となる長期的な異物反応のリスクは、経時的に低下する可能性が示唆されている。

ただし、本治療は皮膚切除を伴うものではないため、たるみの程度や部位によっては適応に限界がある。症例を適切に選択したうえで行うことで、侵襲を抑えた治療法の一つとして活用できると考えられている。

58歳の女性/鼻唇溝から口角のたるみが若干改善している

鼻唇溝から口角の治療前

鼻唇溝から口角の治療1か月後

本稿は、征矢野進一による「スレッドリフト(吸収糸)の治療経験」および関連する臨床報告をもとに、内容を整理・再構成したものである。2008年 日本美容外科学会会報 第30巻 第2号 別冊

1952年(昭和27年)12月29日、長野県木曽福島町に生まれる。1967年(昭和42年)4月に長野県上田高等学校へ入学、高校在学中の1970年(昭和45年)8月から1971年(昭和46年)7月までアメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルトン・アカデミー高校へ留学、同年7月に卒業した。1972年(昭和47年)3月に上田高等学校を卒業後、同年4月に東京大学理科三類へ進学。東京大学では医学を専攻し、1979年(昭和54年)3月に東京大学医学部医学科を卒業。

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